まちのラジオ第2週 「月はぼくらの宇宙港」…最新の月探査計画とは?大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻准教授・佐伯和人さん

2018/04/12

saiki-1荻島さん/五十嵐さん/佐伯准教授/桑江さん/平良さん
箕面の主な活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。毎月第二木曜は、大阪大学社学連携事業。大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
今回のゲストは、大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻・准教授の佐伯和人(さいき・かずと)さんです。

●少年時代…ホムンクルスづくりに挑戦!?
愛媛県出身の佐伯さんは、少年時代から数々の伝説(?)を残してきました。
「拾ってきた石を冷蔵庫に入れたりしてましたね」
これはちょっと困りもの。そこでお母さんは、佐伯さんのお兄さんに説得するよう頼みます。
お兄さんは佐伯さんを連れ出して、こう言います。
「あの松山城の石垣をごらん。何百年も経っているのに腐ってないだろう?だから、石は冷蔵庫に入れなくてもいいんだよ」
その言葉に納得して、ようやく冷蔵庫への石入れは収まりました。
他にも、何かの本に書いてあった「ホムンクルス(人工生命体)」を自分でも作ってみようと、空きびんにマヨネーズやコショウ、雑草などを詰めて調合。床下に安置して、いつできるかな…と楽しみにしながら、いつしかすっかり忘れて放置状態に。
「久しぶりに思い出して、恐る恐る取り出してみたところ・・・」
それはなんかちょっと見たくない感じのものに変質していたのです!
恐ろしくなり、そのまま元の場所に戻して、何も見なかったことにしたという佐伯さん。結局そのびんがどうなったかは、今でも謎のままだとか。
ひょっとしたら、本当にできていたのかもしれませんね。ホムンクルス。

●東大~フランス~秋田~大阪大学へ
 進学した東京大学で、鉱物学や火山、隕石の研究者としての道を選んだ佐伯さん。宇宙を研究したいという希望はあったものの、天文学専攻は狭き門、東大生の中でも本当に一握りの優秀な人しか進めなかったのでした。
「でも、宇宙探査に関わろうと思ったら、天文学者やJAXAのスタッフ以外にも、いろんな道があるんです」
 鉱物から、惑星がどうやってできたかを調べる。これも立派な宇宙の調査です。
小惑星「イトカワ」に着陸し、地球にサンプルを持ち帰った探査機「はやぶさ」。その開発にも佐伯さんは少し関わったといいます。
 その後、研究者としてフランスで1年間、帰国後は秋田大学で、衛星写真の解析を手掛けてきました。
 大阪大学への転任に際し、箕面に居を構えることにしたのは、もっぱら奥さんの勧めによるものだとか。山が近く、自然が豊かで、教育環境もすばらしい!
…こうして佐伯さん一家は、箕面の人となったのでした。

●著書「月はぼくらの宇宙港」が課題図書に!
 saiki-2佐伯さんが、子ども向けに書いた著書「月はぼくらの宇宙港」。月探査の最新情報や、新たに浮かんだ謎、宇宙港としての活用が期待される月の未来・・・。家庭で手軽にできるミニ実験コーナーもあり、宇宙に興味のある子どもたちにはまたとない一冊です。
 この本がなんと、2017年の全国の課題図書に選ばれました!
「それまでは本屋に行っても全然並んでなくて、しょんぼりしてたんですが」と佐伯さん。全国の中学生が読んで、読書感想文を書くという願ってもない展開となりました。

●月探査計画と新たな謎
 2007年に日本が打ち上げた月探査機「かぐや」。搭載されたカメラの開発チームに、佐伯さんは参加しました。特殊なカメラということもありましたが、難しかったのは実証テスト。月面に行ってテストするわけにはいかないので、真空や放射線の環境を再現しながらのテストが求められます。
 苦労のかいあって「かぐや」は無事打ち上げられ、月探査で大きな成果を上げました。
 現在は中国やアメリカなどで月探査への関心が高まり、探査計画が競って発表されています。日本でも負けじと、月着陸実証機「SLIM」計画が進行中で、順調なら2020年には、日本初となる重力天体への着陸が実現します。
 このSLIMに搭載が検討されているカメラを、佐伯さんは現在手掛けています。採用にはたくさんのハードルがありますが、実現すればこれは大きな成果。朗報を待ちたいところです。
 これまでの観測などから、月面には大きな空洞が存在したり、水の存在が予想されています。一方、月の表側と裏側の地殻成分の違いなど、まだ解明されていない大きな謎も残っており、人類の研究課題として、月は今なお空にかかり続けています。
 いずれ人類が自由に月に行くようになり、月の資源を利用して、そこから他の天体に向けて飛び立っていく…そんな「宇宙港」としての役割が期待されている、月。いつになるかはわかりませんが、そんな未来を思い描くのは楽しいことです。佐伯さんたちの研究が蓄積していくことで、それはいつか実現するでしょう。

●他の天体に行けるとしたら?
番組には、佐伯さんの研究室から学生の五十嵐優也さん、荻島葵さん、番組アシスタントとして平良理子さん、桑江良周さんに参加していただきました。
最後に、みなさんに質問。
もしもどれか一つ、地球外の天体に行けるとしたら?
荻島さん「やっぱり、自分が研究している月ですね」
五十嵐さん「ぼくは火星かな」
桑江さん「地球と似ているという、金星に行ってみたいです」
平良さん「私は・・・ブラックホール!」
・・・吸い込まれたら出て来られないよ!?
せっかくなので、佐伯さんにも。
「そうですねえ、木星の衛星『エウロパ』や、土星の衛星『エンケラドス』かな。水があると言われているので、そこに行って宇宙魚を釣ってみたいですね」
いますかねえ・・・宇宙魚・・・。

ホームページ「佐伯和人の惑星地質学・鉱物学研究室」