大学の先生や留学生をゲストに迎えたり、いま話題のテーマで討論したり、地域で行われている催しに参加して取材したり、毎月趣向を凝らしてお届けしています。
(放送…第2日曜午後2時~3時30分・再放送午後9時、翌月曜午後2時)
■発掘!Osaka University
大阪大学の先生や留学生をゲストに招いてお話を聞くこのコーナー。
今回のゲストは、メンバーたちと共に研究室で学ぶこのかた。
「田中悠貴(たなか・ゆうき)です」
岐阜県出身の田中さん。
大阪大学の中では希少(?)な、高専卒のかたです。
地元の岐阜高専で電子制御工学を学び、5年で卒業の後、同校の「専攻科」の2年を修了(大学卒と同等)。
その後、カナダのバンクーバーで1年間の語学留学を経て、大阪大学大学院で現在、ビジネスエンジニアリングについて研究しています。
●ロボコンに捧げた青春
「高専」といえば思い浮かぶのが、ロボコン=ロボットコンテスト。
NHKの主催で、全国の高専からアイデアを凝らしたロボットが集まり、ユニークな激闘を繰り広げる競技です。
田中さんは岐阜高専の部活動で、このロボット作りに取り組みます。
70人の部員がA・Bのチームに分かれ、夜遅くまで試行錯誤に明け暮れる日々。
田中さんが栄えある全国大会の舞台を経験したのは、2011年のことでした。
このときの競技は、人からロボットへアメフトのボールをパスし、ロボットがそのボールをが発射して、ゴールにいる人がキャッチできればタッチダウン成功!という内容でした。
ロボットとゴールの間には相手側のロボットが立ちはだかって、パスを防ごうと邪魔してきます。
その対策として、岐阜高専のロボットはパスの角度を変えられる可変システムを採用。高い弾道で相手の頭上を越したり、防御が追い付けない速さで射ち出すなど、多彩な機能を備えていました。
田中さんの役割は、ゴールでボールを受け取るレシーバー。
1回戦では見事にキャッチし、チームは2回戦へ進出します。
ところが、次の試合では、人→ロボットへのパスが全て失敗。ロボットから一本のタッチダウンパスも送られず、ゴールで呆然と立ち尽くす田中さん。まさかの幕切れでした。
●バンクーバーへ
高専の5年、専攻科での2年を終えた田中さんが向かったのは、カナダのバンクーバー。
「とても過ごしやすいまちでした」と田中さん。
地下鉄やバスなどの交通システムは利用しやすく、人々もフランクでやさしかったそうです。
授業が終わると、そのままバスに乗って山へ行き、スノーボードを楽しみ、そこで出会った人とまた仲よくなり…。
●大阪大学へ
バンクーバーでの1年は、田中さんにとって自分を見つめるよい機会になりました。
ロボコンに取り組んでいた頃から、ロボットに関心を持ち続けてきた田中さん。
高専の卒業研究では、介護ロボットの屋内での制御がテーマでした。
こういったロボットを普及させていくには、行政の関わりが不可欠なのではないか。
そんな視点で次の行き先を探していた折、大阪大学大学院の「ビジネスエンジニアリング専攻」がまさにぴったりの内容だと知り、田中さんは進学を決めました。
今は入ったばかりで「やることが多くて大変」とのことですが、その分充実した日々のようです。
ロボットと人間の共生、AI(人工知能)との関わり方。
心を閉ざしている人が、ロボットには心を開いたという事例もあり、興味のつきないテーマです。
これまで追い続けてきたロボットと、田中さんは今後どのように関わっていくのか。
あの日、受け取ることのできなかった、ロボットから人間へのパス。
それは別の形で、実現していくことになるのかもしれません。