「スマホカメラには、もはや弱点は無くなった」@「カメラとお散歩」

2017/11/01

毎月第一水曜日11時からお送りする「カメラとお散歩」ではスタジオに
カメラマン宮本陽さんをお迎えして、カメラの楽しみ方や撮影エピソード、
ワンポイントアドバイスなどを聞かせていただきます。
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今月の話題は、先月お送りした「インスタ映えの秘密を解き明かす」の拡大継承版と言えるかもしれません。

この時期はモデルチェンジしたiPhoneが世に出てくるタイミングでもあり、iPhoneさえあれば
「もうカメラはいらない!」といった記事が溢れていたのですが、昨年くらいから、
こうした記事が減少しているように感じます。
それだけ一般ユーザーが賢くなったこともあるでしょう。
ユーザーのカメラに対する関心が両極端化してきているため、ネタ風の記事に
見向きもしなくなったという点もあるはずです。

この「両極端化」が現在の流れではないでしょうか。
フルサイズ一眼レフの普及の勢いは目覚しいものがあり、必要な人は高額な投資をしても
しっかりと手に入れます。それは、職業撮影者ではない趣味で取り組む人たちに言えることです。
機器のメーカー出荷台数で見ると、業務使用の数よりも、いわゆる趣味の撮影で使われる台数が圧倒的に多いのです。

他方、カメラという道具があまりにも身近になりすぎたため、性能云々を語ることすら無くなった
ということがあります。多くのユーザーの興味・関心は「インスタ映え」にあり、カメラ性能や特性がどうだといった点にはありません。
たとえば昨日のハロウインを例にとると、仮装をしてハロウィンの様子を収めるのは、ほぼスマートフォンカメラでしょう。そして、撮影後すぐにSNSへアップする。という流れが大半かと思われます。

こうした撮影とその後の利用シーンを考えてみると、スマホカメラには、もはや弱点が見当たりません。それどころか、常に携帯しているという点では、撮影チャンスを逃しません。

ただし、撮影道具としてのカメラを本当に理解している人、理解しようとしている人が減っている可能性があります。
道具を使って自己表現をする。といった楽しみが、知らぬ間に消滅し始めているのではないだろうか?といった点を宮本さんは危惧されています。

具体的には、
1.レンズの焦点距離による「モノの形状」に対する意識
2.正方形で遊ぶことによる「構図で伝える」意識の欠如

スマホでは広角レンズ(ダブルレンズモデルを除く)でしか撮れないため、鼻デカ犬風の形状再現性を強いられます。
これにより物の形状に対する意識が欠如する可能性が大きくなります。

また、インスタグラムなどの影響で、正方形に押し込むことばかりを繰り返すとなんでもメイン被写体を日の丸構図的に撮る体験だけしかしなくなる弊害を生みがちです。

写真は、レンズの特性を知りその特性を使って「自分の表現したい」結果を導き出すものではなかったでしょうか。
そして、長方形の構図内にちりばめる被写体の位置によって、伝える力に変化をつけることが表現の一つだったはずです。

技術は、時代とともに変化し進化しています。
もはやスマホに弱点はなくなったとさえ言える時代になりました。
しかし肝心の、撮影を行う人間の感性がどんどん麻痺してしまっていないでしょうか。

「インスタ映え」する方法やHow to 記事が溢れ、カメラの特性や知識など不要だ……と言っているいるうちに、自分自身の感性を鈍らせているかもしれないと気づいている人がどれだけいらっしゃるでしょうか?

いずれ近い将来、関心を失った時点で「写真趣味」から離れてゆく
人が増えないことを祈るばかりです。

もっと詳しいお話が聞きたい方や、宮本さんの写真講座・講演会にご興味がある方は宮本さんのウェブサイトをご参照ください。

And EM アンド・エム

「カメラとお散歩」毎月第一水曜日 午前11時〜
             再放送 当日午後7時40分〜

**質問&作品 募集!!**
「カメラとお散歩」ではカメラや写真撮影に関する質問、ならびに
あなたの作品を募集しています。

いただいた作品には宮本さんからの講評やワンポイントアドバイスがいただけます。

なおご質問の際には、お使いの機種やどのような状況でのことかなど
なるべく具体的に教えてくださいね。

メールの件名は「カメラとお散歩」係。
816@minoh.netあてにお寄せください。

お待ちしています。
(文責:千波留)