作家・令丈ヒロ子さんスペシャルインタビュー!(ロックオン!ユアボイス特別企画)

2018/11/23

reijou_sp-12010年に始まった「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」は、「子どもたち自身が選ぶ、子どもによる賞」という、全国でも例が無いユニークな取り組みとして注目されてきました。
第9回となる今年の同アカデミー賞で、主演女優賞に輝いたのが『パンプキン!模擬原爆の夏』の主人公・ヒロカ。
作者の令丈ヒロ子さんは、代表作「若おかみは小学生!」が映画化されるなど、子どもたちに絶大な人気の児童文学作家です。
授賞式の行われた11月17日(土曜日)、会場のメイプルホールで、令丈ヒロ子さんにお話を伺いました。

●二度目の受賞!?12年前にさかのぼる深い関わりとは…
reijou_sp-3令丈さん、「二度目の」受賞おめでとうございます!
「ありがとうございます、嬉しいです!」
箕面・世界子どもの本アカデミー賞が始まる前、豊川南小学校の単体での取り組み「図書館アカデミー賞」が行われていました。
第1回の授賞式は、2006年2月24日。主演女優賞に『若おかみは小学生!』の主人公・おっこが選ばれ、作者の令丈ヒロ子さんが豊川南小学校を訪問したのでした。
「当時のことはもちろんよく覚えています。初めての取り組みで、学校の司書さんや先生たちと、どんな式にしようかと手さぐりで進めていきました」
アカデミー賞だから、レッドカーペットを敷いて、オスカー像も用意しなきゃ。
子どもたちが紙粘土で作った金色のオスカー像は、現在も令丈さんの仕事場に飾られているそうです。
reijou_sp-2
●受賞作『パンプキン!模擬原爆の夏』についてreijou_sp-5
主人公・ヒロカの主演女優賞により、二つ目のオスカーを獲得した令丈さん。
作品は、大阪に住む小学5年生・ヒロカが、夏休みに東京から遊びに来た同い年のいとこ・タクミから、自分の町に模擬原爆の慰霊碑があることを聞き、一緒に調査を進めて行くという内容です。
令丈さんの作品はコメディが多く、小学生が旅館の若おかみになったり、小学生の女の子が実は怪力の持ち主だったり、商店街に暮らす中学生たちが突然超能力が使えるようになったり、といった面白い設定が特徴です。そんな令丈さんが戦争をテーマにした作品を書いたのは、どういういきさつがあったのでしょうか。
「これは、私自身の体験が元になっています」
令丈さんが近所にある模擬原爆の慰霊碑を見つけたのは、偶然だったといいます。
アメリカ軍は当時、原爆投下を成功させるため、練習用の「パンプキン爆弾」を製造していました。
大きさも形も重さも、長崎に投下された「ファットマン」と同じ。
そんな模擬原爆が、日本全国に49発も投下されていました。
核兵器でこそないものの、大型の爆弾だったことから、死傷者は多数に上りました。
調べて行くうちに、模擬原爆のことを伝える活動をしている人たちと出会い、ぜひこのことを書いてほしいと頼まれます。
当初は令丈さん自身が登場するノンフィクションの予定でしたが、子どもたちにより身近に感じてもらうために、ヒロカという主人公が誕生することになりました。勉強は苦手で食べることが好き、元気で明るい大阪の女の子。よく考えたらヒロカとヒロ子は一字違いで、主人公は作者の令丈さんの分身ともいえるのでしょう。
「箕面の子どもたちからの感想が、主人公のヒロカに共感したり、友だちのように思ってくれたりしていて、とても嬉しいです」
模擬原爆で多くの人が犠牲になったことに憤る、ヒロカ。
しかし、調べて行くうちに、原爆の研究は日本でも行われていたこと、原爆の被害者は日本人だけではなかったこと、日本の戦争加害など、多くの事実に直面し、どう考えたらいいのかわからなくなってしまいます。
精算されることのない歴史。
今なお流され続ける血と涙。
一人の少女にとって、世界はあまりにも複雑過ぎ、現実はあまりにも過酷でした。
どうしたらいいのか、わからない。でも、わからんなりに進んで行こう。みんなが仲良く暮らせる世の中になるまで。
あきらめたらあかん!
持ち前の明るさで、顔を背けず進んでいくことを決意するヒロカ。
その姿が、多くの子どもたちの共感を呼び、今回の受賞につながったのでしょう。

●生まれ変わるなら・・・男?女?
reijou_sp-4さて、せっかくなので令丈ヒロ子さんにも選んでもらいましょう。
もし生まれ変わるなら男がいいですか?女がいいですか?
「えー、どっちがいいかなー・・・男!」
その理由は?
「いや、純粋に『なったことがない』ので、どんな感じかなーと思って。好奇心が強いんです」
今回のアカデミー賞5部門のうち、作品賞を受賞したのは『おれがあいつであいつがおれで』。
少年と少女の心が入れ替わってしまうドタバタコメディで、実は11月のロックオンテーマの由来にもなっています。
作者の山中恒さんは、なんと令丈さんの文学の師匠だったのでした!
「もう80歳を過ぎていますが、未だに少年の心を失わない先生です」
令丈さんの『パンプキン!』は2011年の刊行で、7年も前の作品の受賞に驚いたといいますが
「山中先生の作品は50年前(笑)。負けず嫌いの先生に『どや!』って言われてるみたいで・・・」
それでも今回の師弟ダブル受賞に「感激しています」とお話しいただきました。