しあわせの道しるべ:第60回(10/11放送)Yoshi Tamlaさん(レコーディング・エンジニア)

2020/10/11

『しあわせの道しるべ』(30分番組)

第2日曜 15:30〜
(再放送:同日夜22:30〜、翌月曜15:30〜)

誰にでもある人生のターニングポイント。
そのとき、何を感じ、どう選択していったのか。

フリーライター・コーディネーター 中村のりこが、
公私で出会う素敵な方々を毎月ゲストにお迎えして、
その方の人生の転機についてお話を伺っていく対談番組です。

大きな波を起こすものではないけれど、
ラジオを聞く人の心に、小さな道標ができる。
そんな番組をめざしています。

今回のゲストは・・・
レコーディング・エンジニア Yoshi Tamlaさん

03Yoshi Tamla(ヨシ・タムラ)さんプロフィール>
大阪出身。現在、大阪在住。
高校卒業後、東京の専門学校を出て
都内のレンタルレコーディングスタジオ
作曲家のプライベートスタジオ
レコード会社のスタジオを経て独立。
以後フリーランスで活動。

【賞歴】
第19回JAM広告音楽大競技會 最優秀録音技術賞 トヨタ「アリスト」
第11回日本プロ音楽録音賞優秀賞 交響組曲ガンダムSEED
第13回日本プロ音楽録音賞優秀賞 交響組曲ガンダムSEED Destiny

【実績】
●小比類巻かほるさん、寺田恵子さん、米川英之さん、吉永真奈さんをはじめとするアーティストのアルバム参加
●United Feature Organization などのACID JAZZ作品に参加
●約1500本のCMに参加
●アニメ作品(以下 例)のサウンドトラックにスコアミキサーとして参加
R.O.D
ソウルイーター
刀語
天元突破グレンラガン
機動戦士ガンダムSEED
機動戦士ガンダムSEED DESTINY
SIMOUN など


エンジニアによって、同じ曲、同じ演奏でも
その音が大きく変わることをご存じでしょうか。

Yoshi Tamlaさんの、空間の反射、残響など計算し尽くした録音技術とそのセンスは、
繊細で心地よい立体感のある繊細な優秀作品を生み出します。

そんなYoshiさんの仕事に対する想いや人生の転機についてお話しいただきました。

01

■レコーディングエンジニアとは

ひと言でいえば、音楽の録音の仕事。
ミュージシャンが演奏されたものを、マイクで集音して、その音色を調整したり響きを付けたりして、最終的に音楽として仕上げる仕事です。

 

■目指したきっかけ

機械をいじるのが好きだったことに加えて、幼少期から音に高い感受性を持った子どもさんだったそうです。

あるとき、修理を終えたレコードプレイヤーの音を聴いて、修理業者の人に「全然直ってない」と言った小学生のYoshi さん。修理屋さんは怒り心頭で、「そんなことを言うならメーカーの人を呼ぶよ」ということになり、後日メーカーの人が見に来たところ、本当に直っていなかったんだとか(笑)。

Yoshi さんの音への感受性を物語るエピソードですね!

その後、中学・高校では音楽が好きになり、音楽を演奏する方に興味が向く人が多い中、Yoshi さんは、音楽を作る方に興味を持ったのでした。

そして「これを仕事にしたい」と、高校卒業後に専門学校に入学。レコーディング・エンジニアとしての人生が始まりました。

 

■エンジニアに必要な“センス”とは

「こんなに大変だとは思いませんでした」とYoshi さん。
海外に行って世界のスーパークラスの制作現場をのぞく度、ここまでのセンスが求められるのかと驚いたといいます。やればやるほど高見が見えて、目指す目標をひとつひとつクリアしていくことの繰り返しだったそうです。

エンジニアに必要なものは、技術はもちろんですが、センスに尽きるのだそう。
では、そのセンスはどのように現れるのでしょうか。

「例えば、カツンと音が鳴ったとします。それに対して、部屋の中でまず響きの反射というものが発生します。さらにそこに対する余韻・エコー感・残響が付くのです。それを感じられるか感じられないかのセンス。それを認知していないと、最終的にエコーをかけられないんです」

「バーンと一気にエコーを付けるのではなく、音楽のカタチにするために、デリケートに少しずつ付けたりして、空間を構成するために付けるんですよね。考え方としては立体ですね。天井の響き、床の響き、ホールの奥行きの響きを全部区別して認知して付けているんですよ」

一度録音したことのあるホールのピアノだったりすると、ある程度は覚えていると言います。それぞれに個性があり、特徴があるのだとか。

すべてのものに命が吹き込まれるようなYoshi さんの言葉に愛を感じます。

そして、その繊細な録音センスは、世界の最高峰のスタジオでの仕事につながっていったのでした。

 

04
■世界最高峰「アビーロードスタジオ」

Yoshiさんが最初にアビーロードスタジオへ行ったのは、24歳の時。業界ツアーでの研修でした。当時勤めていたスタジオを辞めてでも参加したかった研修でした。その後、ロンドンへは何度も足を運び、現地の方にも覚えてもらえるようになっていきました。

東京で仕事のキャリアを積んでいく中で、担当していたアニメ『機動戦士ガンダムSEED』の放送が終わり、ロンドンシンフォニーオーケストラで録音する企画が出たときに、最終的に現地のエンジニアではなくYoshi さんが担当することになったのです!

アジア人がアビーロードスタジオのエンジニアとして入ることが難しかった時代に、この栄誉を得られたのは、人と人とのつながりを大事にするYoshi さんの生き方も大きく関係しているのではないでしょうか。

 

■録音方法が違う英国と日本

金管楽器、木管楽器、打楽器など、それぞれが部屋毎に分かれて録音する日本。
一方、アビーロードスタジオでは、ロンドンシンフォニーが数度のリハの後、一斉に大きな空間での演奏を行います。

それを、同時に録音し、それぞれの音色、空間の反射を想定したマイクの選出と向き、座る位置などを緻密に設定することまで行い、頭の中でイメージした完璧な音楽になるよう、収録していきます。

「チームスタッフさんはもとより、その場の空間を味方に付け、マイクをも味方に付け、どういう意図を持って録音するか。それがないとただただ録らされてしまう。イメージや意識をもっていないとダメなんですよね」

その言葉にプロとは何かを感じます。エンジニアのセンスや技術力で、音楽ががらりと変わってしまうのは、こういうことなのだとあらためて認識しました。

 

■CM音楽制作1500本で培った技術

「商品名、ナレーション、音楽、効果音。それぞれが際立ち、お互いが打ち消し合うことがなく、引き立て合うようにこだわって創ってきました」

その技術力、こだわりが、アニメの世界でも活かされ、3Dの空間を作り出す音楽となっていったのでした。

レコーディングの世界、本当に深い!

 

■今後の展望

「できることならば、次の世代の方に、自分が経験してきたことを少しだけでも伝えられたら、その方たちの何かの足しにしていただけたら・・・」とYoshi さん。

これまでの国内外での経験から得た技術や感覚は、ぜひ時代を担うエンジニアに手渡していって欲しいですね。

30年以上過ごした東京から地元大阪に戻ってこられたYoshiさんですが、大阪のストリートミュージシャンのレベルは高いと話します。そんなミュージシャンのエンジニアとしてのサポートや、音楽で大阪を盛り上げたいという想いも強く、ぜひ関西の音楽シーンの底上げに一役買っていただきたいですね!


Yoshi Tamlaさんからの“道しるべ”メッセージ】

耳を大事にして欲しいです。大きい音を聴きすぎないで。
話し声の大きな若者が増えているのは、少し聞こえにくくなっているためだと思うのです。私は、20代のころからライブ会場でも耳栓を付け、耳を痛めないようにしてきました。一度痛めた聴覚の再生は難しいと言われているからです。
ぜひ生活の中でも、音量を上げすぎないように過ごし、ノイズキャンセラー付きのイヤホンやヘッドフォンを使用するなど、耳に負担をかけすぎないようにして永く耳を使って音楽を楽しんでいただきたいですね。

Yoshiさんのお話しからは、音のプロとしての世界感や覚悟を感じました。
アニメやCM、音楽アルバム制作の現場でのリアルな声を聞く機会、ぜひ企画したいと思います。

Yoshiさん、ありがとうございました♪

【♪放送された音源はこちらをクリック♪】

02

次回の『幸運(しあわせ)の道しるべ』は…

11月8日(日)15:30〜(再放送:同日夜22:30〜、翌月曜15:30〜)
次回もお楽しみに!

(文責:中村のりこ)