まちのラジオ第2週 「虫めづる姫」の意外な真相!?大阪大学大学院理学研究科教授・志賀向子さん

2020/11/12

machi_201112-1 箕面の主な活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。毎月第二木曜は、大阪大学社学連携事業。大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
 今回は大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻教授・志賀向子(しが・さきこ)さんをお招きして、お話を伺いました。
(聞き手:大阪大学社学共創部門学生スタッフ 小松啓子さん)

●研究者への道を照らした「イカのランプ」
 志賀さんが研究の道に進んだきっかけは、高校生のときの授業で行ったひとつの実験でした。
「『イカの発光ランプ』を作りました。自分で一から手順を考えながら、イカから発光細胞を取り出して培養し、暗室に持っていくときれいに光ったんです。わあ、すごい!って」
 筋道を立てて実験し、それが上手くいったことで、すっかり研究の面白さに目覚めた志賀さん。
 大学の理学部に進学し、目の前の面白さを追い求めるうちに「いつの間にか研究者になっていた」そうです。

machi_201112-2志賀教授 / 小松さん
●概日時計と光周性
 志賀さんは昆虫の多様性に興味を持ち、現在は主に「昆虫や貝などの季節適応の仕組み」を研究しています。
 「地球上のあらゆる生物は、一日の長さを測る『概日時計』というメカニズムを備えていると考えられています」
 睡眠と覚醒のリズムを決定し、代謝のコントロールにも不可欠な機能です。
 また、季節の変化を感じ取る「光周性」というものもあり、一日のうちで明るい時間、暗い時間の長さが変わっていくのを認知しているそうです。
 例えばカイコは、季節によって産卵する卵が孵化するか休眠するかを産み分けます。季節を知ることで、不利な時期に卵が孵ってしまうのを防ぐことが可能になるのです。

●不思議な「二日リズム」
 あらゆる生物に備わるという24時間リズム「概日時計」。
 ところが、これに当てはまらない昆虫が発見されました。
 それはオオクロコガネというコガネムシの一種です。
 なぜかこの虫は48時間周期のリズムを持っているのです。
 「もともと、コガネムシを研究したいという学生がいたので、本で調べると『オオクロコガネは二日に一度しか出てこない』とあって」
 そこで、オオクロコガネがたくさんいる河川敷に行って片っ端から捕獲し、羽根に番号を書きこんでリリース。毎日それを繰り返すと、同じ番号の虫が捕獲されるようになります。
 「その周期が確かに二日ごとだったんです」

 あらゆる生物が持つ24時間周期は、地球の自転によるものと考えられます。
 その中で、なぜ48時間周期の虫が存在するのか。
 まさか、地球外からの使者・・・?
 オオクロコガネにはおそらく概倍日リズム(24時間周期を2回カウントする仕組み)が備わっていると推測されますが、それがどんな仕組みなのかはまったくわかっていません。
 「それをぜひ解明していきたいです」

machi_201112-5オオクロコガネ
●研究の一歩は昆虫採集から
 志賀さんには、研究に使っている昆虫類を実際に持ってきていただきました。
 ルリキンバエ、ナミニクバエ、ホソヘリカメムシ、オオクロコガネ、カイコ、ヨーロッパモノアラガイ(淡水産の巻貝)。
 昆虫を研究するには、まず昆虫を集めないと始まりません。
 「ルリキンバエは北海道まで行って、豚舎にトラップを仕掛けて採集します。ナミニクバエは大阪にもいるので、腐らせた鶏のレバーを外に置いて、集まってくるのを捕虫網でサッ」
 大阪大学豊中キャンパスにも、いろいろな昆虫が棲んでいます。
 そこで作成されたのが「豊中キャンパス昆虫マップ」。
 どこにどんな虫がいるかがわかり、学生の実習にも役立っています。 
 自宅でも、ホソヘリカメムシを集めるために庭に大豆を植えているという志賀さん。
 ヨーロッパモノアラガイはエサの小松菜を大量に消費するので、やっぱり庭で栽培しているそうです。machi_201112-4●何度もアガサ・クリスティ
 「特にこれといった趣味もないんですけど・・・」
 強いて挙げるとすれば読書かな、それももっぱら推理小説!とのお言葉です。
 中でもイチ推しはアガサ・クリスティ。
 「ポワロやミス・マープルにワクワクしますね」
 昔読んだものでも、犯人を忘れちゃってて「何度も楽しめます」とのことでした。

●虫めづる姫の真相
 人生をかけて昆虫の研究に打ち込んできた志賀さん。きっと子どもの頃から虫が大好きな、『虫めづる姫』や『風の谷のナウシカ』のような女の子だったんでしょうね。
 「それが実は・・・子どもの頃は昆虫が大の苦手だったんです!」
 妹は平気で触っていたのに、私は全然ダメで・・・と意外な打ち明け話。
 さすがに昆虫を研究するようになってからは、しっかり苦手を克服したといいます。
 それでも、ゴとキとブとリのつく嫌われ者にはかなり抵抗があったそうで
 「なので、さわる練習をしました」

志賀研究室 -比較神経生物学-(大阪大学 理学研究科 生物科学専攻)machi_201112-3