まちのラジオ第2週 日系ブラジル人の子どもたちと出会って見えたもの・・・人間科学研究科付属未来共創センター専任講師・山本晃輔さん

2020/12/10

machi_201210箕面の主な活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。毎月第二木曜は、大阪大学社学連携事業。大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
 今回は大阪大学人間科学研究科付属未来共創センター専任講師・山本晃輔(やまもと・こうすけ)さんをお招きして、お話を伺いました。
(聞き手:大阪大学共創機構コラボレーション・アシスタント 安藤歴さん)

山本さんの専門は教育学。
その中でも、日本に暮らす外国人の子どもたちの教育が研究テーマです。
「今では海外旅行や外国での仕事が当たり前になり、日本に暮らす外国人も増えています」
日本の社会は、グローバル化の一途をたどっています。
「では、教育はどうでしょうか」
グローバル化というよりも、日本の中で暮らしていくための教育といえるのではないでしょうか。
教育をグローバルなものにしていくためには、どうすればいいか。
この課題に対する答えを、山本さんは来日外国人の子どもたちへの教育を通して探っています。

神戸出身の山本さんは、小学生で阪神淡路大震災を経験しました。
その後、大学で文化人類学を専攻することになり、フィールドワーク先を「お金がなかったので」海外には行かず、神戸の在日コリアンについて聞き取りをすることにしました。神戸ではコミュニティ放送局「FMわいわい」にも関わり、ベトナム難民や日系ブラジル人の子どもたちをゲストに招いた番組づくりに取り組んで来ました。
そんな中、山本さんは日本で教育を受けていた日系ブラジル人の子どもたちが、ブラジルへ帰るケースをよく目にするようになります。
「あの子たちはその後ブラジルでどうしているのだろうか」
そんな思いが日増しに強くなっていきました。
2008年になり、ブラジルの日系社会では移民100周年を迎え、その歴史をまとめる人材を探していました。
誰かブラジルに興味を持っている日本の青年はいないか。
そんなオファーを受けた山本さんは、渡りに船、とばかりに飛行機に乗って、単身ブラジルへ向かいます。
「ちなみにそのとき、ポルトガル語はまったくしゃべれませんでした」
着いたその日から、言葉がわからない。
市場で食べ物を買うにも、どうすればいいかわからない。
必死になって「これ、これ」と指さすけど、その「これ」からして通じない。
さあ困った!
でもそのとき感じたのは、ブラジルの人たちが「一緒に困ってくれる」ことでした。
ひるがえって、日本でブラジルの子どもたちに言葉や勉強を教えるとき、自分の態度はどうだったか。
「言葉や勉強がわからなくて困るのは自分なんだから、努力して当然」
そんな風に思ってなかっただろうか。
ブラジルで、市場の人たちが一緒に困ってくれたように、相手を尊重し寄り添う・・・。
「大切なのは、その『姿勢』なんだと思います」
日系ブラジル人を始め、外国人の子どもたちが、日本社会に合わせるのではなく。
日本社会の方が、彼らに合わせる。
「そうやって社会が変わることは、決してネガティブなことではないと思います」

外国人の文化や習慣は、日本のそれとは「違い」があります。
その「違い」を否定するのではなく、逆に面白がってみてはどうでしょうか。
「違い」を「力」にできる世の中に。
そのことで豊かになり、外国人も日本人もお互いに「良かったな」と思える社会をめざしたい・・・。
山本さんの、研究への思いが伝わってくるお話でした。machi_201210-2