まちのラジオ第2週 「触ってわかる」歯の模型を、全国の視覚特別支援学校や障害者歯科に届けたい!

2021/12/09

machi_211209a箕面の主な活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。毎月第二木曜は、大阪大学社学連携事業。大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
今回のゲストは・・・

村上旬平さん(大阪大学歯学部附属病院障害者歯科講師)
小八木圭以子さん(大阪大学歯学部附属歯科技工士学校講師)
十河基文さん(大阪大学大学院歯学研究科、イノベーティブ・デンティストリー推進センター教授)
広瀬浩二郎さん(国立民族学博物館グローバル現象研究部門准教授)

視覚障害者のための「触ってわかる歯の模型」についてご紹介いただきました。
(聞き手:タッキー816スタッフ 野間耕平)


●「大きいサイズの歯の模型」開発の経緯
村上さん「きっかけは、一人の視覚障害者の患者さんでした」
障害者歯科が専門の村上さんですが、ある視覚障害者の患者さんに「この歯を治療しますよ」ということをどうしても伝えられなかった・・・。
普通ならレントゲン写真などで簡単に理解してもらえますが、目の見えないかたには言葉や点字・点図で説明するか、歯型を取って触ってもらうか、いずれにせよ正確に伝えることが困難でした。

「簡単にその人の歯並びを再現できて、触ってわかりやすい模型があればいいのに」

そこで考案されたのが、2倍のサイズの歯の模型です。machi_211209b
ここでコメントをいただくのは、広瀬浩二郎さん。全盲の研究者で、国立民族学博物館で自由に展示を触れる特別展「ユニバーサル・ミュージアム」を企画した、言わば「触ることのエキスパート」です。
広瀬さん「この2倍というのは、絶妙なサイズなんです」
実物大だと、細かいところや入り組んだところがわかりづらく、かといってやたらに大きくしても、今度は全体が把握しにくい。
この大きさが「触って確かめるにはちょうどいい」とお墨付きをいただきました。
実際に開発に携わったのは、小八木さん。
ポイントは、一つ一つの歯に磁石が埋め込まれていて、自由に歯を動かせること。
この形に至るまでに、差しこみ式やマジックテープなど、試行錯誤を繰り返したといいます。
こうしてできたものは、視覚支援学校などでも「わかりやすい」と好評でした。
中には「八重歯の意味を初めて理解した」というかたも。
2017年には、この歯の模型がグッドデザイン賞を受賞しています。

モノはできた、さあこれから普及だ!
・・・しかし現実はそう甘くはありませんでした。
ネックは「制作費」。
量産品ではないため、一つ当たりのコストがどうしても高くなり、ビジネスとしての旨味が無いため、請け負う企業が現れません。せっかくいいものがあるのに、普及することなく終わってしまうのか・・・。
 そこで登場するのが十河教授。大学発の特許や産学連携を推進するポストにあり、かつては自分でベンチャー企業を立ち上げたという経歴を持っています。
「それなら、クラウドファンディングで資金を募ってみては?」
こうしたアドバイスによって、実際にクラウドファンディングが立ち上がりました。
放送日の12月9日の時点で、すでに第1目標の400万円は達成。次は第2目標の800万円、そして最終的には1200万円をめざして、挑戦が続いています。
達成すれば、全国の障害者歯科病院や視覚支援学校に、大きいサイズの歯の模型が行き渡る・・・。
「みなさんのご支援を、ぜひお願いします!」

クラウドファンディング「READYFOR」のサイトmachi_211209c