箕面の主な活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。毎月第二木曜は、大阪大学社学連携事業。大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
今回のゲストは・・・
中村征樹(なかむら・まさき)さん(大阪大学全学教育推進機構/人文学研究会科学技術社会論教授、大阪大学「阪大ワニカフェ代表」)
佐野桂子(さの・けいこ)さん(大阪大学共創機構渉外部門ファンドレイザー)
嶋谷泰典(しまたに・やすのり)さん(大阪大学21世紀懐徳堂、万博推進室、共創機構特任教授)
新しく始まる「阪大ワニカフェ」についてお話しいただきました。
(聞き手:タッキー816スタッフ 野間耕平)
●中村征樹さんと「サイエンスカフェ」
中村征樹さんには、2013年8月の「まちのラジオ」に一度出演していただいたことがあり、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」についてなど、楽しいお話をお聞きしました。当時は准教授でしたが、9年後の今回は教授としてのご出演です。
中村さんが取り組んでいるものの一つが「サイエンスカフェ」。街中のカフェなどに研究者や一般市民が集まり、科学的なテーマについて意見を交わすというものです。
「講演会だと、研究者から一方的に話して、その後少し質疑応答があって終わり。その点、サイエンスカフェは研究者も市民も対等な立場で、お互いに意見を交わすことができます」
それでも、かたやその道の専門家、対する市民はド素人、対話になるのでしょうか?
「それが、なるんです。市民といっても、みなさんがそれぞれの分野での専門家とも言えます。そんな人たちとの対話の中で、思ってもみなかった角度からの意見が出たりして、研究者にとっても重要な気付きが生まれる場となったりします」
特に印象的なものは、鹿児島の花屋さんや、東京のライブハウスで開催したときなど。歴史に詳しい小学生の大人顔負けの意見や、パンクな兄ちゃんが科学に興味津々だったり、そのとき・その場所でこそ生まれる出会いがありました。
●佐野桂子さんと「おんころカフェ」
佐野桂子さんの役職「ファンドレイザー」とは、聞き慣れない言葉ですが・・・。
「大学では、研究や運営のための寄附を、企業や個人からいただいています。その橋渡しをする役割です」
その一方で、佐野さんはがん患者やその家族などが語り合う場「おんころカフェ」の活動に携わってきました。
そのきっかけは、お父さんをがんで亡くしたことだったといいます。
「父の闘病を支える中で、私自身、孤立したことがあって・・・。患者や、周囲の家族へのサポートの必要性を感じました」
大変な思いを誰にもわかってもらえず、精神的に追い込まれていく人たち。
「なんとかできないか」と調べたところ、大阪大学の臨床哲学の専門家・中岡成文教授(当時)が、哲学対話の手法を取り入れていることがわかりました。
中岡教授もお父さんを亡くしていたこともあって、佐野さんの思いが受け止められ、「おんころカフェ」がスタートすることに。
「おんころ」の由来は、オンコロジー(腫瘍学)から。
がんを始め、難病、筋ジストロフィーの患者や家族が、自由に語り合う場として、6年前から月2回のペースで開催されてきました。
テーマは直接病気とは関係無い「愛とは何か」といったものですが、それでも病に関わる話になっていくといいます。
一人で悩んで、ぐるぐる考え込んでしまっていた人。そんな人が他人と話すことで、「自分から距離を取って自分を見る」「思考の軌道をずらす」きっかけに。
ほんのちょっとの気分転換かもしれませんが、渦中にある人には決して小さくない意味があるようです。
※「おんころカフェ」は関係者限定ですが、誰でも参加できる「おんころ広場」も開催されています。会場は船場生涯学習センター(タッキー816から200メートルくらい)
●阪大ワニカフェ
「大学の取り組みを市民にお知らせする場を作りたい。何かできないだろうか」
佐野さんが中岡教授に相談したところ、中村征樹さんが適任だろうと紹介されて、話し合っていくうちに「阪大ワニカフェ」の企画が生まれました。
「サイエンスカフェ」と「おんころカフェ」の取り組みの末の結実、とも言えるかもしれません。
それは従来のサイエンスカフェの延長ではない、発展形の対話の場。
専門家と一般参加者が対等に語り合う、それが「阪大ワニカフェ」です。
●阪大ワニカフェ 第1回
日程:12月4日(日曜日)
場所:大阪大学箕面キャンパス
申し込み:大阪大学21世紀懐徳堂HPに掲載予定
阪大ワニカフェでは、大阪大学の全ての学部をテーマに哲学対話を行っていきます。
医学部編となる今回は「面白い巨塔編」!?
某お笑い興業のお土産みたいですが・・・。
今回のテーマは「終末医療について」。
例えば透析を受けるか受けないか、といった話題が考えられますが、決して固い場ではなく、ゆるやかに話し合う場になりそうです。
最後まで発言せず話を聞くだけでも良し。医療に興味が無くても、話の流れの中で、だんだん発言したくなるかもしれません。
専門家と一般市民、老若男女が集まって、一つのテーマで語り合うとき、そこで何が起こるのか。
きっとその時間、その場所、その人たちでしか起こりえない「何か」が起こるのではないでしょうか。
知的好奇心を満足させたい、「何か面白いことないかな」という人には、絶好の機会かもしれません。