夢は寝ている時だけに見るものではありません。
劇場や映画館では私たちは起きていながら夢を見ます。
そんなステージの「夢」について熱く語る時間「今月のMyスポットライト」。
今回は、タカラジェンヌのセカンドキャリアにスポットを当てた『すみれの花、また咲く頃』を出版された元雪組の娘役 早花まこさんにお話をお聞きしました。
早花まこさんが宝塚音楽学校を目指したきっかけは小学生の時に見た『ベルサイユのばら』。元々おばあさま、お母様が宝塚ファンでしたので、それまでも普通に宝塚歌劇はご覧になっていたのですが、涼風真世さんのオスカルに出会ったことで人生が変わったのでした。
早花さんは2000年、競争率20.1倍だった宝塚音楽学校の入学試験に見事合格。2年間学んだのち、2002年星組『プラハの春』『LUCKY STAR!』で初舞台を踏みました。組配属は雪組で、2020年に退団するまで18年間タカラジェンヌとして過ごしました。
そんな早花さんが宝塚歌劇を卒業することを決意した時、20年間も外の世界を知らずに過ごしてきたので、退団後どのようにすれば良いのかわからず、いろいろなビジネス書などを読んだそうです。でもタカラジェンヌというのはかなり特殊な経験の持ち主。普通のビジネス書のアドバイスにピンと来なかった早花さんは思いつきます。
「そうだ!先に退団した元タカラジェンヌにお聞きすればいいんだ!」
そうして、何人かにお話を伺ったところ、みなさんの経験談やアドバイスが本当に興味深く、背中を押してくれるものばかり。もっともっとたくさんの元タカラジェンヌのお話をお聞きしたい、と思うようになったことが『すみれの花、また咲く頃』執筆のきっかけだそうです。
『すみれの花、また咲く頃』に収められている対談者を見出しからご紹介します。
(敬称略、掲載順 []内は現在の職業)
●早霧せいな [俳優]
●仙名彩世 [俳優]
●香綾しずる [会社員]
●鳳真由 [大学生]
●風馬翔 [振付師]
●美城れん [ハワイ島へ移住]
●中原由貴(煌月爽矢)[俳優 モデル]
●夢乃聖夏 [3児の母]
●咲妃みゆ [俳優]
(早花まこさん『すみれの花、また咲く頃』(新潮社)目次より引用)
通常のインタビューと違い、早花さん自身が元タカラジェンヌということもあってか、拝読すると どの方も良いところだけではない、悩みや苦しみなどをさらけ出しておられるのが伝わってきます。何より、構えたところがなくリラックスした話ぶりで、なんとも言えない親近感を覚えるインタビュー記事だと思いました。
それもそのはず。お一人のインタビューにかかった時間は3時間から3時間半。インタビューが終わった後で雑談が盛り上がり、またインタビューの続きを始めることもあったそうです。早花さんはその膨大な会話の中から、どこをどのように書いたら話し手の真意が伝わるのか、また会話の時の表情や動きまでが伝わるのか、そのことを一番に考えたそうですよ。
元々書くことが好きだった早花さんは、自身の本が出版されることは夢のような話で、実現したらさぞ嬉しいだろうと思っていたそうです。でも、実際に刷り上がった本を手に取った時、嬉しさよりも、責任感が湧き上がったそうです。
「せっかく9人の皆さんが熱く語ってくださったのだから、一人でも多くの方に届けたい、届けなくては」と。
元々超難関を突破した「選ばれし人」である上に、入団後も何かと競争があるタカラジェンヌたち。掲載された9人の中にはトップスターに登り詰めた方もいれば、自分にしかできないことに情熱を燃やした方もいらっしゃいますが、共通しているのは平坦な道のりではなかったこと。そして退団後もご自身の道を歩む中で考え込んだり、喜びを見出したり、本当に「人生いろいろ」なのです。
私 千波留は『すみれの花、また咲く頃』を拝読して、今まで以上に宝塚歌劇が好きになったと同時に、自分自身がこれからも何かにチャレンジし続けたいと思える元気をもらいました。ぜひ読んでみてくださいね。
※『すみれの花、また咲く頃』は新潮社のWebサイト『考える人』の連載の書籍化です。
Webサイトでも読むことができます。⇨「私、元タカラジェンヌです」
ちなみに、一般の転職では、前職で身につけたスキルをアピールするもの。
早花さんに元タカラジェンヌに共通する強みは何かお聞きしたところ
「お稽古で培われた、時間を費やしてみんなで一つのものを作り上げる力。コツコツ努力するのが得意なところ」
「健康管理意識の高さ」
「メイクやカツラなどの制作を通して培った、自分の欠点と向き合い長所を生かすセルフプロデュース力」とおっしゃっていました。
逆に、元タカラジェンヌが苦手なことはパソコン。
中学卒業〜高校卒業で宝塚音楽学校に入学し、その後もお稽古と公演の毎日。パソコンを触る暇もないし、パソコンの操作ができなくても何の支障もなかったため、退団したらまずはパソコン教室に通う元タカラジェンヌは多いそうです。早花さんもそんな一人で、指一本でポチポチとキーボードを叩くところからスタートされたのだとか。想像すると微笑ましい。
今後は執筆活動だけではなく、演劇の勉強も続けていきたいと語る早花まこさんでした。
【早花まこさんの主な活動】
エッセイや情報の発信:note 早花まこ
連載:月刊『歌劇』誌 「つぼ」
(写真提供:)
インタビュー放送
3月22日(水)11:00から約20分(再放送:同日20:10頃から)
(文責:千波留)