大阪大学が発信するホットなトピックの数々を、公開録音でお送りする新番組「ハンダイラジオ」。
第4回の公開録音を、12月15日(金曜日)に、大阪大学箕面キャンパスで行いました。
ちょうどお昼どき、3階の学生食堂前に忽然と現れた放送ブースに、「何ごと?」と学生のみなさんもしきりにチラ見。
そんな中、大阪大学の研究者をお招きして、1時間の対談番組を進行していきました。
<出演>
忽那賢志(くつな・さとし)さん(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学 教授)
<聞き手>
野間耕平(タッキー816みのおエフエム ディレクター)
●医学の道に進んだきっかけ
忽那さんは、北九州の小倉出身。
10歳のときに、お父さんが白血病で亡くなります。
そのときから「白血病を治したい」という思いで、医学の道へ。
当初は血液内科医をめざしていましたが、初期研修1年目で「感染症の研究の面白さ」に気付き、以後は感染症の専門家として歩んできました。
●新型コロナウイルスとの戦いの3年間
2020年から、世界的な感染拡大により、全人類が影響を被った新型コロナウイルスのまん延。
感染症の専門家である忽那さんは、最初期からコロナとの戦いの矢面に立ち、奮戦してきました。
「最初の頃が特に大変でした。どういう病気かわからないまま、治療薬やワクチンもなく、医療機関も限定され、自分も感染するかもしれないという恐怖の中で、治療や対策に従事してきました」
当時に比べて、今では新型コロナウイルスについて多くのことがわかっています。
しかし、後遺症がなぜ起こるかなど、まだ不明なことも多くあり、今後の研究が待たれます。
●コロナとの戦いで得られたものは
「メッセンジャーRNAワクチンの実用化は、大きな成果でした」
従来のワクチン製造には、ウイルスをいちいち培養する必要がありました。
それに対して、メッセンジャーRNAワクチンは、ウイルスの遺伝子配列がわかれば、素早く量産することが可能で、実際にコロナ克服に大きな効果を発揮してきました。
開発者にはノーベル賞も贈られています。
●今後のコロナの再拡大は?
「新たな変異株により、感染が再拡大する可能性はあります。でも、かつての非常事態宣言のような事態にはならないと思われます」
一度かかれば、再感染しても重症化しにくくなる傾向があり、コロナ流行初期のようなことにはならないと考えられています。
ただし、高齢者や持病のあるかたは重症化することもあり、「今後も流行状況に合わせて、マスクや手洗いなどの対策は必要」とのことです。
●むしろインフルエンザが猛威。どうして?
「この3年間、コロナの感染対策により、インフルも抑えられてきました。それでインフルの免疫を持つ人が減ったと考えられます」
コロナ対策が緩和された今、3年分が一気に噴き出して来ているという現状。
プール熱、溶連菌などの感染症も増えているといいます。
●まったく新しい未知の感染症は今後も現れる?
「新興感染症」と呼ばれるもので、百年前の「スペイン風邪」は世界で数千万人が亡くなったと言われます。
新型コロナウイルスは、それ以来の流行となり「百年に一度のパンデミック」とも。
それなら、次はまた百年後?
・・・世界の人の往来は、百年前とは比べものにならないほど増大しています。
温暖化で、蚊やダニの生息域も広がっており、いつまた新興感染症のパンデミックが起こるかわかりません。
「そのため、常に準備をしておく必要がありますね」
市民ができる対策は、正しい手洗いやマスクの着用など。
忽那さんはそのための啓発動画を作成し、「くつ王サイダー」というYouTubeチャンネルにUPしています。
「というわけで、『くつ王サイダー』の動画を見てくださいね(笑)」
さて、せっかくの箕面キャンパス=外国語学部での公開録音です。
ここはぜひ、学生にも参加してほしい・・・ということで、スウェーデン語専攻3年の学生さん5人に来てもらいました。
なぜスウェーデン語?
・・・実は、前日の12月14日に、キャンパス内で北欧の伝統行事「ルシア祭」が行われていました。白装束に身を包んだ娘たちが、ろうそくを手に行進し、聖ルシアを称える歌を歌う・・・。それは冬の長い夜を、明るく光を灯すことで乗り越える、北欧の人たちの知恵ともいうべきものです。
スウェーデン語・デンマーク語専攻の学生たちが、大学キャンパス内で再現したルシア祭は、荘厳かつ和やかで、参加したみんなが笑顔で楽しむ、素敵な行事でした。
「というわけで、公開録音でもう一回それ、やってください!」
「ええっ・・・わかりました」
歌は「サンタルシア」。有名な「サンタルチア」のスウェーデン語版です。
お昼どきの食堂前ロビーに響く、美しいコーラス。
忽那さんも感じ入ったようすで、歌に聴き入っていました。
●くつ王クイズ
5人の学生さんにはそのまま残ってもらって、なんとここからはクイズコーナーだ!
忽那さんから、感染症に関するクイズを3問。
「第1問!○○は・・・」
うーん、なんだろう?
5人で相談する学生のみなさん。
「はい、わかりました。答えは○○です」
ご名答!
さすがは阪大生、なんと3問全問正解です!
これには忽那さんもびっくり。
「ちょっと問題が簡単すぎたのでは?」
「いやあ、そんなはずは・・・」
とにかく、楽しくためになるクイズで、大盛り上がりの時間となりました。
そんな中、学生の一人が打ち明けた衝撃の事実!?
「私、忽那先生と同郷で、同じ高校出身なんです」
「ええーっ!?」
忽那さんを始め、一同びっくり。
先輩と後輩で、しばし地元トークが繰り広げられました。
いやあ、無理言って学生さん呼んできた甲斐がありましたね・・・!
●忽那さんの今後の取り組みについて
「コロナの後遺症について、まだわかってないことが多いので、それを解明していくのが当面の課題です。
将来的には、次のパンデミックに備えて、対応できる人材を育てていきたいと思っています」
他の医学分野と比べて、まだ人材が少ないという感染症の研究。育成は重要な課題と言われています。
忽那さんに続く若手研究者が育つことで、人類は未知のウイルスに立ち向かう力を得られることでしょう。