第5水曜日のデイライトタッキーでお送りするコーナー「今村翔吾の翔語録」。
直木賞作家で箕面本屋大使の今村翔吾さんに、ご自身の著書から珠玉の言葉たちを選んでいただき、その言葉の背景や込められた思いなどをお話しいただく時間です。
今回選ばれた言葉は
「時の栞」
『じんかん』(講談社) P.244 L.10より
『じんかん』は戦国時代、悪人と呼ばれた松永久秀が主人公の物語。
この言葉は、青年時代の松永久秀に茶の湯の手ほどきをした新五郎が語る一言です。
茶の湯は亭主と客が向き合い、二人で時を作るもの。
一方、人間は生きている間に色々なことを忘れてしまう生き物です。
茶の湯はそれを忘れないよう、心に留める栞である、という意味の言葉「時の栞」。
短い言葉の中に、大きな意味が込められています。
よくぞこのようなピッタリな言葉を思い付かれるものです。
芸人さんなどは、日頃から面白いこと、目についたものをネタ帳に書き留めて後で使ったりされるようですが、今村さんは日頃、アイデアを書き留めて後で使うことはないそうです。
「だいたい、書いているときにその場でフッと浮かんでくる。超絶ライブ、超絶アドリブ作家です」
後で読み返してみて、ご自身でも「よくこんな言葉を思いついたな」と思うこともあるそうですよ。
また、『じんかん』では、主人公が何度も「人は何のために生まれてくるのか」「俺たちはなんで生まれてきたのだろう」と、生きる意味を問う場面があります。
これは今村さんご自身の疑問であり、それを知りたいから小説を書いているのかもしれないとおっしゃっていました。
ちなみに、千波留は今村さんの小説の中で『じんかん』が一番好きです。
(2024年1月現在。今後別の作品を拝読して変わる可能性もあり)
今村翔吾さんの『じんかん』は文庫版も出版されています。
これを機会にぜひお読みください。
なお、第5水曜日にお送りしてきました「今村翔吾の翔語録」は2024年度も続きます。
お楽しみに!
【放送日時】 1月31日(水)11:00から約10分(再放送:同日20:10頃から)