大阪大学が発信するホットなトピックの数々を、公開録音でお送りする新番組「ハンダイラジオ」。
通算7回目の番組収録は、9月9日(月曜日)に、大阪大学豊中キャンパス(基礎工学研究科J棟)で行いました。
<出演>
石黒浩(いしぐろ・ひろし)さん(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻 栄誉教授)
樺敬人(かんば・たかひと)さん(大阪大学大学院医学系研究科中性脂肪学共同研究講座 特任研究員)
嶋谷泰典(しまたに・やすのり)さん(大阪大学特任教授 21世紀懐徳堂副学主 万博推進室副室長)
<聞き手>
野間耕平(タッキー816みのおエフエム ディレクター)
まさか、このかたにご登場いただけるとは・・・!
ロボットの世界的権威にして、第一人者の、石黒浩 栄誉教授。
いつかは出演してほしい、でも無理だろうなと思っていたら、出演OKのお返事が。
大手放送局でも何でもない、地域の小さなラジオ局にこうして出ていただけるなんて・・・。
石黒さん「いや、みのおエフエムには20年くらい前に、よく出演させてもらってましたよ」
実は既に、みのおエフエムと縁があったとのこと。
20年ぶりのご出演、よろしくお願いします!石黒先生の隣には、もう一人。同じ顔、同じ髪型、同じ服装・・・石黒先生が、二人いる?
これこそまさしく、石黒浩の名を世界に知らしめた、人間そっくりのロボット。
「ジェミノイドといいます」
顔を左右に動かしたり、右手を上げたり。
間近で見ればロボットということはわかりますが、少し離れれば、普通に人間が座っているようにしか見えません。
噂には聞いていたけど、そばで見ると迫力があって、面白い・・・。
こうした「そっくりロボット」を作った意図は何でしょうか?
「ロボットが目的というよりも、ロボットを通して『人間』とは何か、より深く知るためです」
人間とは、何か。
それは人間にとって、最も重要なテーマの一つと言えるでしょう。
大学の学部を見ても、ほとんどの研究の根源は「人間を知る」ことを目的にしているはず。
「そっくりロボット」を作り、研究することで、まだ理解されていない人間の性質が明らかになる可能性がある・・・。
こうして開発されたそっくりロボット「ジェミノイド」は世界的な反響を呼び、石黒先生本人のほか、マツコ・デラックスや黒柳徹子、夏目漱石のそっくりロボットも作られました。
「米朝アンドロイド」は、桂米朝師匠の米寿の記念で製作されたもので、実際に落語を上演することも可能。
「凄い人気でしたよ」と石黒先生の言う通り、公演の動画では、観客はどっかんどっかん大爆笑。
ひょっとして、本物がやるよりもウケているのでは・・・。今後は、そっくりにする技術はある程度達成できたので、中身をさらに進化させるとのこと。
最新のAIを搭載しているため「かなり私らしくしゃべれるようになっている」。
今は「知能」について研究を進めている・・・。
その最新の成果に、一般の人が触れられる機会といえば。
万博の目玉企画として、8人のプロデューサーが担当する「シグネチャーパビリオン」。
その一つが、石黒浩さんの担当するパビリオン「いのちの未来」なのです。
「50台のロボット・アンドロイドを展示します」
出迎えてくれるのは、人間そっくりのアンドロイドを始め、最新のロボットたち。
「50年後の未来はどうなるのか、ヒントを掴んでもらえれば」と石黒先生。
これは万博のすべてのパビリオンの中で、一番人気となるのではないでしょうか。
「大阪大学公開講座」では、10月8日(火曜日)の講義を石黒先生が担当します。
その講義には、ジェミノイドも?
「いや、この人(?)けっこう忙しいので、僕(本人)が出ます」
石黒先生が現在、力を注いでいるのは「アバター」。
遠隔操作や、AIが自動で判断するなどして、人の意図通りに働くロボットのことです。
高齢化社会を支えるものとして、今後重要になっていく「アバター」。
高齢者、障害者、専業主婦といった人たちでも、在宅で働けるようになる。
その技術は日本の社会を変え、やがて世界にも広がっていくだろう・・・。
大阪駅北側の「うめきた」にあるコンビニでは、実際にアバターのレジが稼働中といいます。
その近くの「大阪大学みらい創発hive(ハイブ=阪大の研究スペース)」でも、アバターの実証実験が行われているとのこと。
「ぜひアバターに会いに来てください」という石黒先生の、その手から生み出される未来に、わくわくが止まらない・・・!
■クラウドファンディング「予兆なく命を奪う腹部大動脈瘤。臨床研究から治療法への光を見出したい」
続いて登場したのは、このかた。
「樺敬人(かんば・たかひと)です」
もともとは内科医でしたが、現在は大阪大学で研究者として「腹部大動脈瘤」の研究をしています。
お腹の大動脈の血管が部分的に膨れ上がる「腹部大動脈瘤」。
瘤が大きくなると破裂する場合があり、そうなると「まず助からない」という危険なものです。
専門家の樺さんがそばにいたら、まだ助かる見込みはあるんでしょうか?
「いえ、残念ながらほとんど何もできないでしょうね」
そのため、予防が大切になってきます。
とはいえ、破裂するまでまったく症状が無く、通常の健康診断でも見つからないという、やっかいなもの。
潜在的な患者は100万人以上とも推測されています。
有効な予防法はこれまでありませんでしたが・・・。
「中性脂肪の一種である『トリカプリン』により、発症や肥大化を抑えられる可能性があります」
ラットへの投与で有効性が明らかになった「トリカプリン」。
人間への効果も立証されれば、今後多くの人の命を救うカギになるでしょう。
樺さんは、その立証に取り組んでいる真っ最中。
すでに被験者の協力による臨床試験も始まっていますが、研究の継続には多額の資金が必要になります。
そこで立ち上がったのが、クラウドファンディング。
「みなさんのお力添えをいただいて、腹部大動脈瘤で亡くなる人を一人でも減らせればと思います。ご協力、よろしくお願いします!」
クラウドファンディング「予兆なく命を奪う腹部大動脈瘤。臨床研究から治療法への光を見出したい」
■大阪大学公開講座
最後は「ハンダイラジオ」でもおなじみの、このかた。
「嶋谷泰典(しまたに・やすのり)です」
番組始まって以来、毎回出演の皆勤賞。
そんな嶋谷さんから、10月開講の「大阪大学公開講座」をご案内いただきました。
9回の講座のそれぞれを、石黒浩さんを始め、各分野の教授陣が担当。
かつてみのおエフエムに出演していただいたかたも、何人かいます。
興味のある講座だけ参加するもよし、通し参加で未知の分野に出会うもよし。
今年は、江戸時代の大坂のまちで、町人たちが自ら築いた学びの場「懐徳堂」設立の300周年に当たります。
「大阪大学公開講座」は、大阪大学の源流とも言われる懐徳堂の、その精神を受け継いでいると言えるでしょう。
いにしえの大坂町人たちの、知への好奇心。
それに負けじと、現代人のみなさんもぜひご参加を・・・!