『五葉のまつり』よりピックアップ@今村翔吾の翔語録

2024/10/30

第5水曜日のデイライトタッキーでお送りするコーナー「今村翔吾の翔語録」。
直木賞作家で箕面本屋大使の今村翔吾さんに、ご自身の著書から珠玉の言葉たちを選んでいただき、その言葉の背景や込められた思いなどをお話しいただく時間です。
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今回選ばれた言葉は

「それが奉行の仕事でござる」
 『五葉のまつり』(新潮社)より

『五葉のまつり』は週刊新潮に連載されたものが単行本になったもので、本日(2024年10月30日)発売開始されたばかりの新刊です。

主人公は、石田三成。
今村さんは『八本目の槍』で、石田三成と”賤ヶ岳の七本槍”を描かれました。

『五葉のまつり』は五奉行の一人としての石田三成を描いたもの。
五奉行とは今で言えば国家公務員の事務次官のような存在です。
戦国時代であるにもかかわらず、この小説には戦の場面がありません。
「北野の大茶会」「醍醐の花見」「刀狩り」「太閤検地」「うりばた遊び」という、豊臣秀吉が仕掛けた大事業、今で言えば国家プロジェクトを成功させた縁の下の力持ちだった五奉行の物語です。

戦や青春をテーマに石田三成を描いた『八本目の槍』。
政治をテーマに石田三成を描いた『五葉のまつり』。
ここまで来たら次は「三」を使って石田三成三部作の締めくくりにしたいと語る今村さんでした。楽しみにお待ちしましょう。

ところで、本日は千波留の誕生日。
誕生日を重ねるごとに目がしょぼしょぼ、読書しづらくなってきている千波留は、最近は読書と並行して、耳で聞く小説「オーディオブック」を活用しています。
今村さんに、作家として「オーディオブック」をどう思っておられるかお聞きしたところ、「紙の本至上主義」ではなく、耳で聞く小説にも肯定的でいらっしゃいました。
歳とともに目が衰え読書したくてもできない人、そもそも最初から目が不自由な方にも本を楽しんでもらえる点が素晴らしいと。
また、ご自身の作品はオーディオブック向きではないかと思うそうです。
今村さんは執筆の際、ご自分で声に出しながら書いていらっしゃるのだとか。言葉のリズムを大切にされていらっしゃるのです。だからでしょうか、千波留は今村さんの小説をオーディオブックで聞くと、目の前に景色や登場人物の表情がまざまざと浮かんでくると感じていました。
ただ、オーディオブックは作成に費用がかかるため、今のところ、どんな本でもオーディオ化されるわけではありません。作成単価が下がれば、もっと色々な方に小説を楽しんでもらえるのでは、と耳で聞く小説の未来についても語る今村翔吾さんでした。

【放送日時】

10月30日(水)11:00から約10分(再放送:同日20:10頃から)

(文責:千波留)