大阪大学が発信するホットなトピックの数々を、公開録音でお送りする新番組「ハンダイラジオ」。
その公開録音を、12月23日(月曜日)に、大阪大学箕面キャンパスで行いました。
<聞き手>
野間耕平(タッキー816みのおエフエム ディレクター)
<出演1>
安達宏昭(あだち・ひろあき)さん(大阪大学大学院薬学研究科 特任教授)
安達さんは島根県松江市の出身。大阪大学で電気工学を学び、一般企業に就職後、再び大阪大学
に戻って研究者の道を選びます。
その安達さんが、なぜか今は薬学研究科に?
それは、ある物質との出会いがきっかけでした。
MA-Tとは(Matching Transformation system/要時生成型亜塩素酸イオン水溶液)のこと。
ある企業から「消臭や殺菌効果に優れた物質を開発したが、どのようなメカニズムなのか調べてほしい」と依頼がありました。安達さんが大阪大学の専門家に相談し、そのメカニズムが明らかに。
基本の成分は、亜塩素酸。その一部が、活性化した「水性ラジカル」という状態になっています。それが臭いの原因の分子や細菌に作用し、刺し違えて倒します。ラジカルが消費されると、その分だけまた亜塩素酸が活性化し、ラジカルに変身。この繰り返しで、常に一定量のラジカルが保たれるという仕組みです。
従来の殺菌・消臭剤は、効果を高めようとすると濃度を上げる必要があり、その分人体にも悪影響があったりします。
その点、MA-Tは十分な効果を保ちつつ、悪影響はまったくありません。
さらに、同じ原理の応用で、メタノールの生成もできてしまうというから驚きです。従来、メタンガスからメタノールを作るには、600気圧という超高圧下で、変換効率は1パーセントほど。それがMA-Tを用いれば、常温常圧で100パーセント変換できる・・・。
それどころか、MA-Tの同じ原理で、抗がん剤としての使用も研究が進められています。実現すれば、副作用が全然無い抗がん剤ができる・・・。
この夢のようなMA-Tが、もうすぐ表舞台に立つ日が来ます。
「大阪・関西万博の、大阪ヘルスケアパビリオンに出展します」
消臭・殺菌剤としての展示・PRはもちろん。なんと大阪パビリオン全体の空間洗浄にも採用されるとのことです。大手の空調メーカーなどを押さえての正式採用は、このMA-Tの優秀性をそのまま証明しているといって良いでしょう。
いち早くMA-Tの優れた可能性に気付いた安達さんは、ベンチャー企業を立ち上げ、さまざまな事業を展開。さらに、関連企業による「MA-T工業会」も結成し、MA-Tを巡る動きをさらに発展させています。
これらの取り組みが評価され、イノベーション大賞で最高賞の「内閣総理大臣賞」をも受賞しています。
今後の海外進出で、MA-Tは驚きを持って世界に認められていくでしょう。感染症に悩む地域の救いになるなど、大げさでなく「MA-Tで世界が変わる」日が来るかもしれません。
ゆくゆくは、ノーベル賞も!?
「夢ではないと思います」と安達さん。
まずは当然、化学賞。
そして抗がん剤などの技術により、生理学賞も。
感染症の犠牲者を減らすことにより、平和賞さえも。
空前の、ノーベル賞バックスクリーン3連発・・・それだけのポテンシャルを秘めたMA-T。その名前が世界に轟き、常識となっていく過程を、私たちはこれから目の当たりにしていくことでしょう。
<出演2>
大島かれんさん(大阪大学万博学生部会「はまでいず」所属・神戸常盤大学 保険科学部 診療放射線学科 4年)
4月から大阪大学大学院に進学する大島さんは、福島県での「浜通り研修会」に参加した学生たちとともに、2021年に「はまでいず」を立ち上げました。
東日本大震災でも、特に甚大な被害を受けた福島県の太平洋側、「浜通り」と呼ばれる地域。原発事故の放射線で、帰還困難地域とされた大熊町・双葉町・飯舘村は、徐々に除染が進み、少しずつ人が戻って来ています。
ただ、復興と呼べるには程遠いのが現状で、今後の継続的な支援が課題となっています。
大島さんはこれまで20回ほど福島を訪れ、そこに暮らす人たちと交流を続けてきました。
「大阪大学の文化祭で、福島の生産者による物産を紹介・販売してきました」
ホームページでも、浜通りの現状を発信している「はまでいず」のみなさん。
3年前に比べると、帰還困難地域が縮小していたり、
除染土を運ぶトラックをあまり見かけなくなったりと、変化も感じているそうです。
大阪・関西万博でもステージ発表の予定があるということで、それに向けて「これから計画を練っていきます」と大島さん。世界の人たちにも、福島の「いま」を知ってもらう、またとない機会になりそうです。
<出演3>
嶋谷泰典さん(大阪大学特任教授 21世紀懐徳堂副学主 万博推進室副室長)
「ハンダイラジオ」ではすっかりおなじみの嶋谷さんからは、今年開催の「大阪大学公開講座」の模様をお伝えいただきました。
「石黒浩教授のロボットや、安達さんのMA-Tの講義など、毎回大きな反響がありました」
平日の日中の講義ながら、オンライン受講する高校生も多く、史上初?かもしれない小学生の参加もあったといいます。
確実に関心が高まっている「大阪大学公開講座」。来年度のラインナップも、今から楽しみです。