第5水曜日のデイライトタッキーでお送りするコーナー「今村翔吾の翔語録」。
直木賞作家で箕面本屋大使の今村翔吾さんに、ご自身の著書から珠玉の言葉たちを選んでいただき、その言葉の背景や込められた思いなどをお話しいただく時間です。
今回選ばれた言葉は
「この日ノ本に生きる全ての者の光に。」
『人よ、花よ、』下巻(朝日新聞出版) P.382 L10.より
『人よ、花よ、』は南北朝時代、33歳で命を終えた若者 楠木正行が主人公の物語。
南北朝時代は京都の北朝、奈良・吉野の南朝、日本に二つの政府があった時代です。
覇権を争った地が近畿ということで、ここ箕面も彼らの行動範囲でした。
箕面市小野原東2丁目にある「楠水龍王」は、楠木正行の父 楠木正成が水を汲んで飲んだと言われる場所を祀ったものです。
当時政府が二つあったということは、政策も二通りあったということ。
南朝の楠木家は現代でいうところの運送業を営んでいたこともあり、財源が豊か。
当時から楠木正成 楠木正行に民の人気があったのは、北朝より租税が安かったことも理由の一つ。可能であれば南朝側で生きていきたいと考えた人も多かったと思われます。
そのように政府(南朝・北朝)に翻弄される生き方は安定とは程遠いもの。
「この日ノ本に生きる全ての者の光に。」
には、誰か(何か)に左右されず、安心して生きていくことができる世界を目指す第一歩という意味が込められています。
そしてもしかしたら私たちが生きている現代こそが、南朝が目指した世界ではないのかと、今村さんは考えておられます。
歴史小説は過去の物語を通して、現代を見つめるきっかけをくれるものかもしれません。
次回の「今村翔吾の翔語録」は10月29日放送です。
お楽しみに。

<余談1>
今村さんは執筆が終わってからタイトルを決めることもあるそうですが、『人よ、花よ、』は楠木正行を主人公にすると決めたときに頭に浮かんだそうです。
また『人よ花よ』ではなく『人よ、花よ、』と未完成な感じを残しているのは、読者一人一人に続く言葉を考えてもらえたら、という思いなのだそう。
また南朝の象徴である桜が描かれた『人よ、花よ、』の表紙には仕掛けがあります。
上下巻を並べると一本の古木になりますし、さらに本の帯を取ると南北朝時代の桜が現代の桜になります。
ぜひご自身でも確かめてください。
<余談2>
宝塚ファンの千波留は、『人よ、花よ、』の主人公が楠木正行と聞いた時に、2021年月組公演『桜嵐記』を思い出しました。当時の月組トップスター珠城りょうさんが楠木正行を演じた作品で、トップコンビ珠城りょうさん、美園さくらさんのさよなら公演でもありました。
今村さんの小説は熱い男性が主役のことが多く、宝塚歌劇で上演するのに向いているのではないかと千波留は考えております。
今村翔吾さんは宝塚歌劇の舞台をご覧になったことはないそうですが、『桜嵐記』のことはご存知でしたし、ご自身の作品の舞台化にも前向きな姿勢でいらっしゃいます。
今村さんの作品を宝塚歌劇で拝見する日を楽しみにしております!
【放送日時】 7月30日(水)11:00から約10分(再放送:同日20:10頃から)
(文責:千波留)

