「格差」の真実は…大阪大学理事・副学長・特別教授・大竹文雄さん(まちのラジオ第二週)

2015/03/12

ohtake-1箕面の活動グループが週替わりでお送りする「まちのラジオ」。
毎月第二木曜は、大阪大学の社学連携事業・大学と社会のつながりをテーマに放送しています。
今回は、大阪大学理事・副学長・大阪大学社会経済研究所教授・大阪大学特別教授の大竹文雄(おおたけ・ふみお)さんにお越しいただきました。

●NHK「オイコノミア」
大竹さんは、現在NHK・Eテレの番組「オイコノミア」にレギュラー出演中です。
ある日、大竹さんのもとを訪れた一人の男性。
大竹さんの著書を読んで、ぜひ番組を作りたいと思い立ったというテレビ制作会社の社長でした。
「経済学について、こうして部屋で語り合うような番組にしたい」と思いのたけを語る社長の熱意にほだされ、大竹さんは出演を了承します。
前身の番組を経て、2012年4月から「オイコノミア」がスタート。相手役のお笑い芸人・ピース又吉さんとともに、経済に関するさまざまな題材を、親しみやすい視点から取り上げてきました。
当初は半年の予定でしたが、好評につき期間延長となり、今年4月からはこれまでの水曜深夜11時25分から月曜夜10時に、時間も25分間から43分間に拡大して放送されます。
「同じ時間帯に『プロフェッショナル 仕事の流儀』『SMAP×SMAP』『しゃべくり007』などがあって、こちらは裏番組になるんですけどね(笑)」
いや、向こうが裏番組です!?

●「経済」との出会い
大竹さんの出身は、京都府宇治市。
実家の金物屋で店番をしていたことが、大竹さんの「経済」との出会いでした。
配達、集金など、大人とのやり取り。オイルショックではトイレットペーパー価格が高騰し、「あらかじめ予測できれば儲かるのに」と思ったことも。不況のあおりで増えた失業者が、昼間に店に来るのを相手しながら、大竹少年は景気の変動を肌で実感していたのでした。
京都大学に進学して経済学を専攻し、大阪大学の大学院へ。
アメリカとイギリスでそれぞれ1年ずつの研究を経た後、大阪大学の教授として現在に至ります。

●ノーベル経済学賞、トービン教授との出会い
アメリカのイェール大学では、他の研究者とのランチミーティングで、英語の聞き取りに集中するあまり食事が遅くなり、みんな食べ終わってるのに自分だけごっそり残っているといった苦労もありました。
ドライブスルーでコーラの「Light」を頼んだら、バケツのように巨大な「Large」のカップを渡され、途方に暮れたことも。
一緒に渡米した奥さんは英語の個人指導を受けていましたが、その先生はなんと、ノーベル経済学賞のトービン教授の奥さんだったのです。こうして奥さんつながりでトービン教授と知り合った大竹さん、バカンスには別荘に招かれて、スキーやチェスをしたり、経済学について語り合ったりと、得難い経験をされました。

●所得格差の研究
幅広い経済学の中で、大竹さんは「労働経済学」「行動経済学」の専門家として研究を続けてきました。
大竹さんが取り組んできたテーマの一つに「所得格差」があります。
かつて「一億総中流」と呼ばれた時代から、現在は格差が広がり、金持ちと貧困層の差が増大していると言われるようになりました。経済格差を表す指標の「ジニ係数」も、1970年代から現在にかけて増大しており、格差社会を裏付けているように見えます。
しかし大竹さんは独自の分析により、ジニ係数の増大は、高齢化や世帯構造の変化による影響が大きいことを見出します。
・高齢者は、もともと所得の差が大きい。その高齢層が増えたことで、全体の格差が広がったように見える。
・単身世帯などの増加により、世帯当たりの所得だけを見ると「低所得」の世帯が増えた。
これらの要因が「見かけ上の格差増大」を生んでいる…大竹さんの提言は、大きな反響を呼びました。

●栄光の賞
大竹さんは、その研究により、これまで多くの賞を受けています。
2008年に受賞した「日本学士院賞」の授賞式は東京の学士院で行われ、天皇・皇后両陛下も臨席されました。
業績の説明のあと、両陛下との質疑応答があり、続く食事会では皇族のみなさまと同じテーブルで会食するという、晴れがましい一日となりました。
その他、2006年の日本経済学会・石川賞や、2005年には日経経済図書文化賞、エコノミスト賞、サントリー学芸賞を1年のうちに受賞するといった快挙も達成しています。

●著書、書評など
これまで多くの著作がある大竹さん。
どれから読み始めればいいか迷ってしまうほどです。
その中から、二冊をご紹介いただきました。

・「競争と公平感-市場経済の本当のメリット」
・「経済学的思考のセンス-お金がない人を助けるには」(いずれも中公新書)

「競争と公平感」は10万部、「経済学的思考のセンス」は6万部を売り上げたといいます。
また、毎日新聞で定期的に掲載している書評は、経済の分野を超えて多岐に渡っています。

それにしても…
授業、研究、論文、理事の仕事、さまざまな委員、著書、書評、TV出演。
その仕事量は、「超人的」の一言です。
ひょっとして、そっくりな大竹文雄さんがあと3人くらいいて、手分けして仕事をこなしているのでは?
大竹さんに、どうやって時間を捻出しているのか、お聞きしてみました。

「時間を捻出する『コツ』ですか…。

そんなものは、ありません」

コツなどなく、ただコツコツとやる、それがコツ。
…ありがとうございました!

[大竹文雄さんのホームページ]
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/~ohtake/