今回のゲストは、大阪大学競技かるた会のみなさん。
「3回生の熊崎紘太(くまざき・こうた)です。競技かるたA級四段です」
「2回生の安田知世(やすだ・ともよ)です。B級三段です」
「1回生の松本ゆり子です。A級四段です」
設立から15年を迎えた、大阪大学競技かるた会。
部員は現在約50人で、豊中キャンパスの和室のある建物で、放課後に毎日活動しています。
全国には、東大や京大など、歴史のある競技かるた強豪校がたくさんあります。その中にあって、大阪大学は比較的新しいチームですが、なんとなんと。
大学日本一を決める大会で、2014年、2015年と連続優勝を果たしました!
現在、大阪大学は競技かるた日本最強。いえ、世界最強の大学ということになります。
そんなみなさんの練習場所に伺い、練習風景を見せてもらいました。
練習では4組が対戦することになり、札が並べられます。
「それでは、試合を始めます」
まずは、15分間の暗記時間。
さっきまでの喧騒から一転、聞こえてくるのは微かな空調の音のみ。
そして、一見静かですが、札の配置を懸命に記憶する対戦者たちからは、息詰まるほどの集中力が伝わってきます。はたで見ていて、小さな物音を立てるのもはばかられる、動から静へのそれは見事なコントラストでした。
「残り2分です」
ここからは、素振りが可能になります。
右へ左へ、素早く振り抜いてから、畳をバン!と叩く一連の動作。音だけ聴くと、柔道の受け身の練習のようです。
こうしていよいよ、対戦へ。
札の読み上げには「ありあけ」という専用の機械が使われます。100枚の札をランダムに読み上げ、リモコン操作でスタート・ストップが可能。一見レトロな外観ですが、音声データはメモリーカードに記憶され、カードを交換すれば読手(どくしゅ)の声も変えられるという優れものです。
競技かるたで使用される取り札は、50枚。読まれる札は100枚、なので2枚に1枚は場に無い「空札(からふだ)」となります。この時に場の札に触ると、お手付きになってしまいます。
この練習試合では、最初から立て続けに空札が三回出ました。対戦者は双方とも、素早く手を動かしますが、札には触らず、空振りさせてから畳をバン!と叩きます。そして、次の一枚。
「ひさ」
バシュッ!と一閃。
10枚ほどの札がなぎ払われ、勢いよく吹き飛びました。
札には、最初の一字を聴いただけで取れるものから、六字まで聴いてやっと取れるものまで、いろいろあります。読まれた札が確定するまでの文字を「決まり字」といい、これを正確に覚えることが、競技かるたの基本となります。「ひさかたのひかりのどけきはるのひに」は二字決まりの札で、さすがに部員のみなさんは、二字聴いた時点でほぼ同時に手を動かし、タッチの差で取ったり取られたりしていました。
身を乗り出して対峙する両者、頭と頭の間隔は10センチもあるかどうか。激しい動きに、頭がぶつからないか心配になりますが…。
熊崎さん「意外にぶつからないものなんです」
対戦している中には、体の大きな男子学生と小柄な女子学生の組み合わせも。一見、手の長い方が有利に思えますが、実はこれもハンデにはならないとのことです。競技かるたは、体格差、男女差、年齢差に関わりなく、対等に対戦できる、稀有な競技といえるでしょう。
■名人戦、運命のひととき
競技かるたの世界の、最高峰。それは「名人」と「クイーン」です。
年に一度の決定戦で、全国の強豪を倒して勝ち上がった挑戦者が、男性は名人、女性はクイーンと対戦し、勝者が新たな名人・クイーンとなります。
その名人位を3連覇中なのが、岸田諭(きしだ・さとし)さん。実はなんと、大阪大学競技かるた会OBのかたなのです!5年前に卒業し、現在は会社員の岸田さんですが、練習ではたまに後輩たちと対戦することも。
松本さん「試合させてもらったんですが、さすがは名人でした。いろいろな技の完成度が高くて…」
それでも、その時は「5枚差でした」という松本さん、名人相手に大健闘ではありませんか!?
この番組の収録日は、1月9日(土曜日)。
この日は奇しくも、年に一度の名人・クイーン決定戦が行われる当日でした。
滋賀県大津市の近江神宮で行われる試合のようすは、インターネット中継されます。
岸田諭名人に挑むのは、福井の強豪・川崎文義八段。部員のみなさんによれば「最強の挑戦者です」。
午前10時40分に始まった試合は、3試合先取した方の勝ちとなります。
第一試合は、岸田名人が貫録を見せつけ、大差の勝利。
第二・第三試合では、調子を上げた川崎八段が、僅差でものにしました。
そして第四試合。
「やばい。名人、押されてるよ…!」
それはちょうど、番組の収録中でした。
スタジオの中で、みんなでタブレット端末をのぞき込みながら、必死の声援を送ります。
挑戦者の陣は、残り一枚。
奇跡の大逆転は…?
次の瞬間、両者の手が交錯。タイミングは同時です。
「ああーっ!!!!」
双方が手をついて、互いに礼。
そして、読手にも礼をします。
競技の終わった瞬間でした。
岸田諭名人、四連覇ならず・・・!
残念な結果となりましたが、それでも最高峰の技の応酬は、迫力満点、見ごたえ充分。競技かるたの醍醐味をたっぷり味わうことができました。
岸田さんには、来年の名人戦で、ぜひリベンジを果たしてほしいものです。
「ちょっと待って。ということは、今度の予選で、岸田さんが出てくるってことだよね!?」
それはそれで困る(?)、と部員のみなさん。そう、現役の大学生でも、勝ち進めば名人・クイーンになれる可能性があります。
夢は大きく!阪大同士の名人戦とか、阪大生クイーン誕生とか!
みなさん「はい、がんばります!」さて、練習を見ていて気になったのが、部員のみなさんの来ているTシャツ。毎年お揃いのTシャツを作るそうですが、なぜかパンダが描かれています。
イメージキャラクターでしょうか?
白地に黒字のかるたの札を表しているとか?
「それなんですが…」
阪大→はんだい→ぱんだい→パンダ
ダジャレかーい!
ということは、魚のモチーフが描いてあるのも…?
大阪→ローマ字で”osaka”→”osakana”
やっぱり、ダジャレかーい!!
…と、オチ(?)がついたところで、最後に今後の抱負を。
「はい。それはもちろん、
全日本大学かるた選手権大会 三連覇!
応援します!がんばってくださいね!